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少子化対策とは何か

2020.09.10 15:07

総裁選のニュースを見て、スタッフやママ友らと共に、がっかりしていることがあります。
それは、少子化対策として各候補者が挙げた施策について。

3氏はそれぞれ、不妊治療の保険適用、出産費用の実質無料化や待機児童対策、フランス等の少子化を克服した国の施策を見習ってなんでもやるなどと語っていました。
一つ一つは、是非とも実現してほしい政策ですし、総裁選の場で少子化対策について熱心に議論が交わされるのは喜ばしいことですが、聞いていた私たち、いわば当事者たちの胸に響くことはありませんでした。

それはなぜか。
この日本における少子化の本当の原因は何なのか、その根本を考えないまま、誰かに吹き込まれたかのように個別の政策を訴えているに過ぎないと感じられたからです。
私たちが望む少子化対策の根本は、男女共に、産み育てながら働ける環境を整えることにつきます。

不妊治療の負担を軽くすることは確かに大事です。
子どもを持つかどうかはまさしく個人の、そして夫婦のそれぞれの選択ですから、そこに一つの価値観を押し付けることは適切ではありません。
ただ、子どもを望んだカップルが子どもを持てるように最大限支援をしていくことは大切です。
以前秋田市で私がお招きいただいた15人ほどの会でも、不妊治療に200万かけたけれども授からなかったという方が複数名いらっしゃいました。
我が家もまた、結婚4年でようやく子どもを授かったこともあり、この方たちのお話は他人事とは思えませんでした。
不妊治療は、心身ともに苦痛を伴うところに、さらにあまりにも重い経済的負担もあるのです。

出産費用の無料化。これもまた大切です。
妊娠は病気ではないとして、妊娠出産に関するものは原則保険の適用外とされてきました。
出産一時金として今では42万円が支給され、都心の病院等でなければ、出産入院時の費用がカバーできる場合もあると思います。妊婦検診には公費負担がありますが、公費対象外として行われる検査もあり、ほぼ毎回持ち出しがあります。このやり方が何を生んだか。望まない妊娠や中絶等で多くの自己負担が生じ、それらの費用をまかなえないと感じるがために、出産直前まで検診を受けなかったり、中絶の時期が遅くなり身体に余計な負担がかかったり、不幸にも赤ちゃんが命を落とすような事例につながってきました。妊娠出産にまつわるものは原則無料、もしくは保険がきちんと適用され、それがしっかり周知されたならば、こうした事例は確実に減るはずです。

少子化を克服した国を見習ってなんでもやる、もちろんそうしてほしいと思います。
でも、それならばどうしてここまで少子化が進んだのか、不妊もどうしてここまで増えたのか、戦後ほとんどの政権を担ってきた自民党がその本質を理解しなければなりません。
それは、若い女性たちが、働きながら産み育てる環境が整っていないと感じ、結婚や出産を先延ばしにしてきたからということも大きいと感じます。かつての私もその一人でした。
当然、それは、女性個人が責めを負うべきことではありません。
両立することが難しいと感じさせる社会が女性の意思決定を大きく左右してきたのです。

男性と同じように、仕事を楽しみながら、家庭をもち、子どもを育てたい。
そんなごく当たり前の望みが、現実問題として難しそうだ、あるいはかなり仕事に障害がでそうだ、さらには仕事か出産かの二者択一を迫られるような状況のもとで、多くの女性は、特に親元を離れて子育ての援助を親に頼れないと感じる都会に出てきた女性たちは、結婚や出産を躊躇してきました。
第二次ベビーブームの終わりである私が45歳。本当であれば、この世代が出産適齢期になるまえにこうした問題を解決しておかなければならなかったのです。でも、私がそうであるように、もう出産することは厳しい年齢になっています。人口としてボリュームゾーンであった出産可能年齢の女性たちが出産適齢期をほぼ終え、これから下の世代はそもそも人数が少ないのですから、日本の少子化は既に決定的なものとなりました。
これからいくら実効性のある施策をしたところで、人口が増えることは、移民に頼ることなどをしない限りあり得ない未来です。

少子化対策をとるには遅すぎる今この段階になってすら、次期政権を担うであろう主要3氏が、この「子どもを産み育てながら働く環境づくり」に一言も触れてくれなかったことが、あまりにも残念です。
女性キャスターの、「子育てをやってきたという方はいますか?」との問いに、正直に3氏は手を挙げませんでした。そのことを責めるつもりはありません。そういう時代、世代であったことは理解できます。ただ、この3氏を囲む党所属議員らも誰一人としてこのことに言及するようにと伝えられなかったのか。そうした環境で意思決定が行われるであろう次期政権にどうして私たちが希望を持つことができるだろうか。
そのように感じざるを得ない総裁選のニュースでした。


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